今日の推薦盤一覧2004.11上 |
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11/1(月) ストーンズご一行、ゼップの皆さん、リトルフィートの衆、ポールMさんその他英国の音楽屋多数が「出たな。」「ああ、出たんだってよ。」と噂が噂を生んだとお話に聞いておりますのがこのワイルド・チュピテュラス。ニュオリンズ・ファンクの傑盤として後世にまで語り告げられてる一品であります。とは言え外国の民含め皆さまに聴いていただくためにこんな数々な不利な点を抱えた盤は無し。まず持ってジャケにびびる。インディアンの扮装をした黒人さんご一行。そして大体バンド名をどう読んだら言いかわからんとゆう。困ったもんだ。このチッピーズ、正体はミーターズ&ネヴィル・ブラザースそして親戚がものしたものであります。ミーターズと言えば70’sニューオリンズ音楽シーンの牽引車としてぐんぐん引っ張った屋台骨バンド、その類稀なるグルーブはアメリカ南部のみならず世界中のノリノリ野郎を虜にして先の英国ミュージシャン達に有形無形のモチベを与えました。そのミーターズの中心人物がアート・ネビルさん。そのアートさんのお母さんのお葬式の際、兄弟親戚が大集合、そのお母さんの兄さんジョージ・ランドリー氏が率いるブラック・インディアンのトライブ、ワイルド・チュピテュラスのアルバムを皆で結束して作ろうとなったのがこのアルバムが世に出た由来でござる。そもそもそのブラック・インディアンなるものは何か。ちゅうとニュー・オリンズのお祭と言えば謝肉祭をフランス語にしたマルディ・グラ(彼の地はフランスの植民地でありました)。そのお祭で山車と言いますかグループを作って練り歩きますのがその地域の仲間達で作ったトライブと呼ばれる集団だとゆうことで。リオのカーニバルなんかにも同種のものがござる。で、なぜインディアンかとゆうと別に混血とかゆうわけでは無いらしく、その昔、アメリカに奴隷として連れて来られたアフリカ黒人達。彼らが自由を求めて買主の手から逃亡した時にかくまってくれたり逃亡の手引きをしてくれたのが地場のネイティブ・アメリカン、インディアンたちだったそうなのです。その行為に敬意と感謝を込めての名称、扮装と言う訳で。とまあ歴史的背景はずどーんとしたものありますが、このレコード自体はお祭ものですからそりゃ楽しいもので。しかも「うえー」とか「うおー」とか部族てなやつは、まあ少しはあるけれど、まるで無し。コンテンポラリーな旬のファンクてんこ盛りでござる。何しろ最強メンバーですから。結束強い家族物つうてもさあさあ旅のお方、恥ずかしがって無いでこっちへ来て酒のまんかい、さ、さ踊って踊ってって気さくさと何とも言えぬのんびりさが嬉しいす。なもんで初めてニューオリンズものに触れようとする方にも安心してご推薦させていただけるぞい。さてプロデューサーとしてクレジットされているのがこれまたニュオリンズ・ファンクの重鎮アラン・トゥーサン氏。だけど実際お仕事はなーんもしなかったらしく、ミーターズの時もしばらく名前だけでなーんもしなかった彼についにこの時参加メンバーはぶち切れ。翌77年にミーターズ解散、ネビル・ブラザース結成となったいわく付の盤でもあるそう。偉大なるアランさんの音楽にとろとろとなってるこちとらには寂しい話でありますが。 |
11/2(火) 当サイトの4番でエース登場です。エリック・カルメン率いるラズベリーズ。ベストのところで書きましたようにアメリカはクリーブランドの人気バンドが合体しての結成、プロデュースはジミー・イエナー、72年とゆう絶好の時期にビートルズとビーチボーイズ、ザ・フーの遺産を総決算したバンドなのだ。絶好の時期って書いちゃったけどあと4,5年登場が遅かったらチープトリックに勝るとも劣らない大人気バンドとしてミュージックライフのグラビアを荒らしまくったろうにその意味じゃ早すぎた駆け抜けたバンドだったかもしれません。フロントマン、エリックさんもシンガーソングライター・ブームが一段落した後に独立といささか間が悪く。ま下手な過剰な人気は音楽作りにしんどい面もあるでしょうから丁度良い塩梅だったと思っておこう。と言ってもヒットはしました。何と言っても1曲目、2枚目のシングルとなるゴー・オール・ザ・ウエイ。冒頭からこのバンドはこうなんだーって魅力凝縮のパワーポップです。エリックさん本人も前記巨大3バンドの合体を目指したと申してるそうですが、普通ならそんな大それたこと出来るかいてなもんを見事実現。嘘ではありません。もしまだ未聴の方おりましたら試聴だけでも是非。納まりきらない意欲とパワーを無理やり押し込めたリミッター・サウンドもそりゃ衝撃的で。そのぶっ壊れ方がパワーの所以なしごななのだ。えー、アメリカン・バンドってやつはシングルの曲はキラー、決定的なメロディを持つやつでも概してアルバムの他の曲はおっとっとなもの入れちゃってる例がけっこうあるんですがこのバンドは違うぞ。エリックさんのあまりの才人振りに持ってかれてたまるかと思ったかどうか他のメンバーも頑張って佳曲連発、くそ曲などただの1曲もありません。でもなあやっぱカルメン先生、ほんとに尊敬の意味を込めてそう言いたいほどの素晴らしい曲作りぶり。もう最初から遠慮無しの才能発揮だわ。3.のアイ・ソウ・ザ・ライト、5.のウエイティング、6.のさよならは言わないで、最後のアイ・キャン・リメンバーともうエバーグリーン曲決定です。ピアノぽろりん恥ずかしいくらいの2枚目風情だけど全然嫌味にならんのだこれが。クラシック、特に彼の永遠のアイドル、ラフマニノフ要素の絡み方ももうすっかり自分のお肉にしちゃってからに。それは変なコンプレックスじゃ無くて愛です。クイーン・オブ・ヒズ・ソウル。でそのキンラキンラの名曲に挟まってのメンバーの小品。軽妙なこれらの曲が混ざったこのバランスが実にバンドならでは良さ。結果として緩急自在、全編楽しさ満点の名盤、つうより何より愛盤だな、なりました。適当に演奏が荒れてところどころおっとっとになるとこも魅力。小奇麗に作ってれば良いってもんじゃないぞ。とゆう訳で絶え間なき良曲を作り続けなければならないパワーポップ道に果敢に挑戦、登場の彼ら、とにかくこの道は労苦の多い割りに見返りが少ない。だけど即効的な見返りが少ないけどだからこそのエバーグリーン、聴くこちらも大切に大切に思ってこれからもずっと聴きたいものです。 |
11/3(水) スリー・ドッグ・ナイト。言わずと知れた70’s前半米大陸チャートを荒らしまわった汗のヒット・メイカーです。自作自演のSSWの波がどわっと押し寄せた時代に音楽は愛されてなんぼヒット命のカバー街道。取り上げた曲の絶妙さ、アレンジの秀逸さで元曲の地味ーな連中をも引き上げたとゆう偉ーいお方達。結成は67年、3人のヴォーカリスト、ソウル塊コリー・ウエルズ(ジャケ左多分)、繊細なまず髭チャック・ネグロン(中央)、朴訥さんダニー・ハットン(左)がまず集いダニーさんのマネージャーがビーチボーイズのブラザー・レコードの代表を兼ねていた縁でブリアン・ウイルソン氏のプロデュースでレッドウッドとゆう名前でレコーディング。しかしレーベル内部の混乱でオシャカになってしまい仕切り直しヒット製造レーベル、ダンヒルと契約、その際にやたら派手な演奏をする楽団4人と合体してスリー・ドッグ・ナイトとしてデビューいたしました。しかしまた三犬夜とはなんぞや。聞く所によりますとオーストラリアの原住民アポリジニの風習のことで寒い夜に3匹の犬と寝ることを言うんですって。暖かーいのねこれが。へーへーへーへー。で、68年にデビューして以来最初のブレークは69年のワン、最高位5位、ニルソンさんの曲です。それからはもう出す曲出す曲もう大ヒット、初のナンバー1は70年のママ・トールド・ミー。ランディ・ニューマン氏の曲。これなんか原曲の意匠とどめておりませぬ。はっきり言ってお犬様達の方がポップ・ソングとしては魅力大で、しかしまーあの地味地味なやつをよくもこんなキャッチーぼかんに変身させたもんだと。そして71年の「喜びの世界」で駄目押しの大爆発、さらに「オールド・ファションド・ラブソング」でポール”ファントム”ウイリアムスの曲を、あの妖しい声のまんまじゃこれとて地味ジミイなものをストレートにしかもいやらしく無くやっておくれで、ブラック&ホワイトなんてゆうスカ、ロック・ステディの名曲にも挑戦、見事これも1位に。その後は中ヒット続いて最後の爆発は英国のレオ”ピエロちゃん”セイヤーのショー・マスト・ゴー・オン。イントロの衝撃的サーカス・メリーゴーラウンド音から始まってレオさんの泣き声歌にさらに逞しさと筋肉をプラスしたシャウト泣き声で歌の中心をどかーんと貫きました。そのファッションの物凄さともどもけっしてかっこいい人達で無く音楽も洗練なんて言葉とは程遠いけどこれがいずれもPOP。そんなこと普通は不可能なんですが(^0^)。楽屋の机の木の臭いがしそうないずれの曲もだからこそこっちのハートを鷲づかみするのかなあと思ったりして。その生々しさ、あまりにものアメリカンな風情で英国ではさっぱしだったのも何か納得。あちらの国は音楽はあくまでも異世界の世界に徹してるようなとこありますから。音楽くらいは夢を見させておくれって。しかし実生活の中に生々しく入ってくるスリー・ドッグ・ナイトの音楽だってもちろん大いに有りです。こちとら海の彼方両方行けちゃうポンニチですからその利を生かしてたっぷし満喫しちゃうよ。今の綺麗な音パンパンの音楽で育った人達にはどう聴こえるか想像でけんけど、新横浜ラーメン博物館とかウケてるとこみるとこれは人類共通のホッとする空間かもしれん。ぶっ潰して初めてわかる古い商店街アーケードの味わいなのですきっと。バンドの方は次第にわしが前で歌うわしが前で歌うの争いが激化して76年に一旦は解散、各人ソロでやったもののパッとせず、ダニーさんだけはヴァン・ダイク・パークス博士のジャンプでの名唱ありましたが、81年にバックメンバーは変動するも再結成、きっと今でも全米各地をジョイ・トゥ・ザ・ワールドしてる。持ち味はがんがん残しているに違いない気がいたしますので是非見たいぞ。来日しないものでしょうか。紹介させてもらったのは83年に出たベスト、オリジナル・アルバムには買うのにはばかれるすげージャケのやつのもありますし、何つっても基本はヒット・シングルな人達ですからベストが万歳です。一緒にリンクしてるのは2004年、今年になって出た最新ベスト、これはジャケはうーんなやつながら時代順のヒット登場でこれから買うならこちらの方がいいかなあって物です。いずれにしよ心の中で確実に一角占めてる大切な人達だなあ。 |
11/4(木) ホワイト・ファンクの代名詞アベレージ・ホワイト・バンド、そのブレーク・アルバムがこの2作目AWBです。70’s前半に花開いたファンク・ミュージック。全米シーンではブラック勢のベテラン、ジェイムス・ブラウン親父、スライ・ストーン兄貴は元気、さらには新興勢力も続々登場とディスコ前夜にグルーヴの嵐を巻き起こしておりました。ところがどっこいいつもならすぐに取り入れてロック化してしまうホワイト連中には4番でエースがなかなか出ない。じっとりと皆待ってたところ彗星のようにぴゅーんと登場は何と異国スコットランド出身のAWBでござります。ホワイト、ブラックで活動拠点がはっきり分かれてるであろうアメリカでなかなか出現しなかったのは仕方が無かったのかもしれませぬが、それに引き換え英国、特に北部では根っからソウル好きが大勢、寒いから踊らにゃやってられなかったとかメンバーは仰ってるけどクラブではノーザン・ソウルの数々がアメリカ人なぞ目じゃないくらいディープに展開してたそうで。そこで育った黒好きの若者達、やっぱ業界で成功するならロンドンロンドン愉快なロンドンだろがーと上京、各自スタジオ・セッションマンとしてこつこつ働いてた時に、おーおめもスコットランド人かえ、おーおらもだってんで意気投合、結成となった次第。さあバンドだ、チャート荒らしてスタアだーと勢い込んだは良いけれど時は70’s前半場所は英国、右を向いても左を向いてもグラム兄弟ばっかし、こりゃあかんと意を決して夢の新大陸アメリカに渡る事に。アメリカではまずMCAと契約してShow Your Handつう盤を出したもののその充実振りと裏腹にちいともヒットせず、くそ負けてたまるかわしらにはもう帰るとこなぞ無いんじゃと仕切り直し、次に契約したのがアトランティック。音楽の神様は見捨てておりませんでした。そこにいたのが名匠プロデューサー、アリフ・マーディン。この時期ホール&オーツのアバンダンド・ランチョネットを手掛け、後にはビージーズをホワイト・ソウル化させて化け物にしちゃったトルコ人のおっさんでござる。正に人を得てのアルバム製作。アリフさんのたってのたくらみと言えばファンク・ミュージック、何とも魅力的な宝の宝庫であるけれどやっておるのは当然ブラックさんばかり、ブラックの人達のやるファンクは一言で言えばひねくれております。そりゃそうだぐおーっと盛り上がって来た公民権運動と連動、自らにしか出来ない部分を拡大強調して来た結果がファンクですけん。ホワイト世界から対極にあります。当然仲間内でしかわからん符丁みたいな要素もわざと沢山盛り込んでる。別にあっちの人が買ってくれなくともけっこうとゆう訳で。しかし惜しいまったく惜しいこの音楽きっとブルースについでロックの柱になるのにとアリフさん、そうしたしがらみの無い若者を探していたところ出会ったのがこの海の向こうの田舎若人たち。目がキラキラしておりました。まず作戦としては白人であることを隠すつうか正体不明に。バンド名は正直なだけにアイロニーだけど、まあジャケの尻マークを代名詞に突進しようと。ヒットするに従って噂が噂を呼びこれやってんの白人なんだってよとなってそこで効果百倍でございます。中身はもう自信満々だったのでしょう。もうブラックそっくりにやるのが楽しくってしょうがないってゆう歌い方。だけど。最初にブレークしたのはご存知インスト曲、ピック・アップ・ザ・ピーセズ。JBスタイルのファンキイ&ホーンながらそこはイギリス人、グルーブ一発悪く言えばだーらだらしてないできちっと起承転結、すっきりと直球どかんと。特に目立つのはドラム、ハイハットの締めぱしぱしってこの快感ってありゃしません。適所適所に絡む、ぱこぱこーってパーカッションを入れたのはアリフさんかえ。これもあると無いとは大違いの快感ポイントだー。そして終わり方。これでもう出来たとたんナンバー1になるのは間違い無しのものに。そして先のボーカル曲群です。わかって聴くと白人だよなあって感じだけど知らなきゃやっぱ真っ黒。スクール・ボーイ・クラッシュ、パーソン・トゥ・パーソン、ガ・トゥ・ラブ、ワーク・トゥ・ドゥとこれまたぴしっと締まった名曲ばかり。こうゆうのはそれまでのファンク界ではありそうで無かったものばかりです。本家の人達も逆にびっくり影響もただならぬものじゃなかったんではないかと。とゆう訳で大成功、望みをかなえてこんな幸せなことはありませんAWB、ところが好事魔多し、残念なことにこの盤のブレーク後バンドの屋台骨ドラマーのロビー・マッキントッシュ氏が急死されてしまいました。そう言えば最後の曲だけやけに沈うつなんだよなあ。まったく惜しいとしか言えません。それだけにこの盤は貴重、大切なものです。後のAORの先駆けとしても今もまったく古くなることはありません。名盤です。はい。 |
11/5(金) 74年の夏に入ってにわかに盛り上がって来たディスコ、ダンスフロア・ミュージックの波。それに伴って新人ちゅうか街で闊歩してたあんちゃん達バンドがどわっと登場してきました。まず西のLAからヒューズ・コーポレイション、南からKC&ザ・サンシャイン・バンド、海を渡った英国からの刺客AWB、そしてNYはブルックリンから登場がこのBTエクスプレスです。JB、スライ、オハイオ・プレーヤーズ、アイズリーズ、カーティス・メイフィールド、アイザック・ヘイズ、フィリー・ソウルが切り開いてきたファンクの花を謳歌すべく。そのいずれもがプロデューサー、サウンドメイカー的人間を中心の匿名バンド風。多分より音楽中心、ダンス中心の実用音楽として愛されるべく生まれてきたものだからかも。誰がやってるのかあまり皆気にしない街の音楽とゆう訳で。このBTズの棟梁はジェフ・レインとゆう男です。ジャケ写真にも登場せず影のボスでござい。音頭を取って72年頃からブルックリン周辺のミュージシャンを集いキング・デイビス・ハウス・ロッカーズ(かっこええ名前)ってバンドで出発、それがブルックリン・トラッキング・エクスプレスとなり頭の部分を略してB.T.エクスプレスと。くしくも西のヒューズ・コーポレイションがボート、お船のイメージなのに対抗した形になったNYだから通勤電車だわさ。ってこれは偶然かな。でもまあ通勤などしそうにないメンバーの面構えでして(^0^)。ジャケに写ってる駅がまた汚いこと。線路も大丈夫かいなってくらいぐにゃぐにゃ。あらゆる箇所が錆付いていてもう見てるだけでオイニイがしそうです。音楽も臭い臭い。ブラック美学満載の伊達男音楽かー。最初にヒットいたしたのがドゥ・イット(ティル・ユア・サティスファイド)。最後までこれがバンドの代表曲となるもの。「しなよ(二人が満足するまで)」って訳でこれは完全にスケベ歌だ。何と無しに今まで聴いてたけどこれもしかして史上初のラップ曲だったりして。ハンドクラップ、妖しいあえぎ声にのって満足するまで踊ってください。そりゃもーかっこええったらありゃしません。次にヒットがエクスプレス。「急行」だなあ。多分これは京浜急行の急行で、そりゃもう凶悪にぶっとばします。AWBのピック・アップ・ザ・ピーセズと続けて聴くと同じファンク・インストながら、まーこれほど空気と臭いが違うのかと感動しちゃって。ファンクだからと言って一派からげはいけませぬ。その2曲を中心にグルーブ一発勝負、そのグルーブが並々ならぬものだからそりゃもうたまらんって音楽が満載、同じブラックミュージックつうても今はもう失われた何かだけでなりたってるような音楽でござる。残念なことに現在はこのオリジナル1stアルバムは廃盤状態。しかしライノからあのリマスター名人ビル・イングロット氏の関わったベストが出てます。ここから5曲チョイスされてるので充分満喫可。バンドは81年まで突進、そして分解、文字通り70’sの真っ黒バンドだったのね。シックの源流ここにあり。 |
11/6(土) 79年にウルトラヴォックスを脱退したジョン・フォックス氏、クローン・アンドロイド、ギャリーの出現を横目に徹底的そぎ落とし未来アルバム、メタマティックを発表。さらに新生髭ウルトラボックスの登場、成功を目の当たりにして世界に問うたのがこの2ndアルバム、ザ・ガーデンであります。わたしゃ何しろこの方の大ファンでして元祖ウルトラボックスの1stと3rd、そして先のメタマティック、このガーデンは人生アルバムにしっかりと入ってるつう感謝しても感謝し切れませんつう人なのです。元々ウルトラボックスってバンドはこのフォックス氏の独特の節回し、チャントって言ってもよろしいかと、で音作りが成り立っていたバンドですからミッジ・アーを加えてそのまま3rdの音をロマンティック展開にした髭UVの方は冗談にしか思えなかった次第。今は別の意味で楽しむ余裕が出来ましたが。やっぱり当のフォックス氏も冗談にしか思えなかったかギャリーちゃんにきっちり落とし前を付けたあと、ここに3rdの後を引き継ぐ真のウルトラヴォックス・サウンドってのはこうゆうもんじゃいとここにものしたザ・ガーデン。けっこう負けず嫌いと見た。あきら。相棒は、帰ってきた渡りギタリスト、ロビン・サイモン。その3rdシステム・オブ・ロマンスの音の中核を為した男。がーががっがががのリズム一本でジョン・マクガフ氏と並んでNW界大職人ギタリストと称される御仁であります。1作目のリアル未来サウンドを聴いてだれしも次のはどうなるとどっきどきしてたところ、やってくれましたフォックス氏。ザ・お庭と来た。ジャケットも田園。1曲目「雨の後のヨーロッパ」でいきなり生ギターとエレクトロニクス。自然と耽美なんて意表を付かれてしもうたわ。でその自然で通すのかと思いきや2曲目の「システム・オブ・ロマンス」、タイトルからして意地丸出しの曲では大爆発。ディスコ・ビートです。バスドラ4つ打ちのこってこて。1曲目も気付けばそうだったのだ。でディスコはいいんだけどけっして只の踊りではござらぬ。勇壮です。スパルタカスの軍勢一万騎がローマに向かって雄たけびを上げながら、がっがっがとしっかり地面を踏みしめて行進するがごとし。べこべこべことシーケンサー、がーががっがががと絡みつくギタア、フォックス氏のチャント・ヴォーカル、三位一体となってまーかっこいいこと。もう何回聴いたかわかりませぬがいまだに鳥肌びんびん立っちゃって。その勇壮、逞しい音楽がどーんどどどーんと次から次へと続いて煽られるわ煽られるわ。カウンターのシンセ必殺欧州哀愁メロも続々登場。もうくらくらでどうすんの。強力一人コーラスも絶好調。レコード盤ひっくり返してもまだまだ続き続き臨界点ずーっとですから。で、最後のタイトル曲、「お庭」で何事も無かったように鳥の声がさえずるわ、あんたそれだけ暴れたらそりゃ静かになるわなって突っ込んで静かに終わります。パンダの気ぐるみ脱いだら中にはホワイト・タイガーがおりました。食いつかれないように気合を入れて聴きましょう。言われなくても元気が出るわなこれ聴けば。えーと髭ウルトラヴォックスのこと?忘れちゃった。ははは。 |
11/7(日) 1978年10月に一斉に出すことになりましたキッス各メンバーのソロアルバム、一発実力の程を天下にかき示してあわよくばピンで独立とゆう静かな野望を抱いていたピーター&エース両氏の作品、そりゃあ気合が入ったものでした。それに引き換えもう充分にキッスです目立ってますのフロントマン、ポール&ジーンの盤はいかに。両者ともバンドで既に出す曲は出してるしどうなのだろう。ポップ・ミュージックつうのは音楽と同時にキャラも売ってると申した方がおりましてなるほどしかりと思い、となるとキャラの申し子キッス、1/4になって不利なのかもしくは4倍売れちゃうのか。 |
11/8(日) とんでもなく好きです。何か悪口言われたら確実に暴れる。軽く褒められたり他のバンドとかと比べてどうのこうの言われたりしても逆上してしまう危険な盤です。私にとってのロックとPOPの最高地点にある盤。何回聴いても飽きませんがもし飽きちゃったらどうしようと不安になっちゃって今や手軽に聴くことすら出来ない。勇気を出して(^0^)また聴いてみたけどいやもう初めて聴いた時そのままのキラメキ。飽きるどころかますます渋みと照りが出て来てしもうたわ。全部一人でやっております。ドラムからキーボードからギターからベースからサックスまで。なもんで究極の息の合い方。今みたいに打ち込みじゃ無いすよ。昔に比べて特にドラムがめっぽううまくなってもはやもたつくことなど微塵も無し。1曲目のオール・ザ・チルドレン・シングから息もつけない12曲、34分50秒。入るところに音が入って極上のメロディにぴったり張り付いてます。たおやかに歌い、叫び、こちとら一緒に歌いたいがとてもじゃないが歌えないのでコーラスで参加させていただいてます。人がいると恥ずかしい。まったく才能のある人間がノってる時の力って恐ろしいすよねえ。どうやったらこんな音楽が作れるのか頭の中覗いてみたいわ。しかも時間をかけて作った風で無く短時間でどわーっと作った感じ、一人多重録音に有りがちなベターっとした辛気臭さなど微塵もありませぬ。物凄い勢いとノリ。一人で録音しててよくこんなシャウト出来るもんだ。きっと音楽の神様がそばで見ていたに違いありませぬ。CD化はライノ。これがまた音が良い。絶対そうだとリマスター担当を見てみるとやっぱしこの人、名人ビル・イングロット。アナログの暖かさそのままで聴こえない音も聴こえて来てオノマトピアなんかじゃ瞳孔が開きっぱなしになります。ジャケが地味な印象もありもし後回しになっちゃってまだお持ちで無い方、すぐさま行っちゃって下さい。家宝になること必定。保証いたします。つうかこれが駄目って方はこころっくすで私が書いてること全て信用して貰えなくとも仕方がありませぬ。頭の一部にいつもどっかと座って見ているよ。音楽を本格的に始めた頃スティーリー・ダンのAJAと並んでこんなん聴いちゃって決定的に自分で音楽やるのにどうしたら良いかわからなくなっちゃった。だからパンク/NWやるっきゃなかったんだよなあ。結局近づくことさえ出来ず仕舞いで。当のトッド氏にとってももしかしたらそうかもしれない。個人の才能を超えた何かが起こったとしか思えません。狂ってたんだなきっと。そしてその狂気ってのがロックとPOPの星の中心にめらめらと燃えてなけりゃいけないものなんだ。 |
11/9(月) 70’s後半スティーリーダン”AJA”やトッド・ラングレン氏の”ミンクホロウ”などで素晴らしさにくらくら、しかし到底凡人が挑戦参加することなど不可能な世界に絶望するしかなかった所にそれらの凄さはじゅうじゅう認めつつもあえてひっくり返したパンク登場、こちとらもこれでもしかして出来るかもしれないと歌えるものはとにかく歌い楽器が触れるものはかき鳴らし詩を叫び何も出来ないと思ったものはとりあえず踊り暴れると一緒になって成長出来る希望を持ちました。XTCもそんな中生まれたバンドでそのやんちゃさに喝采、ところがどっこいみるみる内にでっかくなってアルバム”ブラック・シー”当たりからもう見事ですと平伏するしかなくなってしまい。そしてさらに86年のこのスカイラーキングを聴いてやっぱり才能無いと音楽は駄目だーと心底実感してしまいました。そこに登場したのはあの才人トッド・ラングレンってことで。因縁だわこれは。私と言えばあの時は降参したけれど今回はあがいて何とかこの素晴らしい音楽に近づきたくて当時出たてのカセット4TRでまねして曲作ったものの当然及ぶはずもなく、仕方が無い駄目でも自分の音楽するしかないなと。そうゆう意味でとことん聴き倒した思い出の盤です。さて本題に。XTCはこの盤を作る前けっして良い状態ではありませんでした。アンディ・パートリッジ氏の疲労によってライブ活動休止した後、それでも「ママー」「ビッグ・エクスプレス」と意欲作を作ったものの評価、セールスともども散々で、わずかに時間が出来て遊びでやった覆面バンド、デュークス・オブ・ストラトフィアのEPが本家より売れちゃったつう嬉しいのか悲しいのかわからんことが良い話くらいで。後は元マネージャーとの金銭問題の裁判とかお金がかかって食うにも困るくらいだったそう。当然所属レコード会社のヴァージンから印税の前借。そんな訳で次のアルバムの製作話が出た時、彼らの意見に逆らうことが出来ずアメリカ人のプロデューサーを起用することに。そしてアメリカでのレーベル、ゲフィンの意見によってその役目はかのトッド・ラングレンに決定いたしました。喜んだのはギターのデイブ・グレゴリーさん。トッド・フリークで自作自演コピー・テープを作っていたくらいですから。そしてベースのコリンちゃんも大歓迎。トッドさん実は以前からXTCのファンで特にコリンさんの曲が大好き、大評価しておったのです。な訳で渡米して彼所有のユートピア・スタジオで地獄の合宿録音が始まりおった。トッド氏は予想通り究極の仕切り屋さん、これまた予想通りコリン氏の曲ばっかし採用してハナからアンディさんご機嫌斜め、あれよあれよと指示されて録音進む中、徹底的に逆らうことで自分の存在を主張いたしました。彼もトッド氏の才能を充分に認めていたはずですがずっと自分でXTCの音楽を作って来た自負もあったのでしょう自分の知らないところでどんどん出来て行ってしまうとゆう不安と認められて無いのでは無いかとゆうミュージシャン・ジェラシーが。すったもんだの末、録音完了後もミックスの駄目出し2回、アンディさんもトッド氏ももうこんなアルバム投げちゃおうかと思ったものの何とか完成。そしたらこんな傑作が出来てしまいました。思うに多分トッド氏の思う通りにすっかりやらせていたらトッド・ラングレン&XTCつうアルバムにきっとなっていたと予想します。それが彼の望みでもあったろうし過去にそんな感じで仕事した前科も有りで。それはそれで素晴らしいものになったかもしれませんが、結果としてアンディさんが徹底抗戦したおかげで稀に見るトッド臭さのないトッド・プロデュース作になったとゆう。彼の力量はコンパクト&キャッチーなPOPさそしてピリっとスパイスの隠し技でいかんなく発揮、そして主人公はあくまでもXTCと。これはもう無敵、最初から最後までマジック満載のパラダイス・レコードです。揉めに揉めたつうたってお金の問題なんかじゃなくてジェラシーも含めて音楽の上ですから、これは叩き合って成長し大きく強くなった競馬馬みたいなものであるのだ。考えてみればこんな才人たち通しが出会ってそんな風に作ったレコードにこちとらがかなうはずも毛頭なく、何でそんなこと思ったか、恥ずかしい、やっぱしもやっぱしひたすら聴いて感動、平伏するのみです、はい。シングルは宗教色強しってことでもともとのLPには入ってなかったCDでは最後に収録のディア・ゴッドをB面にしたグラス。そしたらそのB面がアメリカのカレッジ・ラジオでがんがんかかるようになりヒット、引っ張られてアルバムも75万枚セールスと最後まで波乱のこの盤、アンディさんも今ではトッド氏に感謝しているんですって。 |
11/10(火) ザ・バンド、75年の7作目です。スタジオ盤としてはカフーツ以来の4年ぶり。その間は遊んでいた訳では有りませぬで数々のライブ、ボブ・ディラン親分との共闘とか頑張っておりました。もちろん仏様ライブ盤とムーンドッグ・マチネーつう極上エンタメ盤も出しての。環境の変化と言えばリヴォン・ヘルム以外のメンバーがカリフォルニアのマリブにお引越し、そのせいもあってか録音はズマ海岸にあるシャングリ・ラ・スタジオ。プロデュサーは自身でエンジニアはロブ・フラボニさんておっしゃる良い臭いがしそうな名前のお方です。実を申すと私のリアルタイム・ザ・バンド遭遇はこの盤から。洋楽聴き始めてから2年目だから遅いかな。存在はもちろん知ってましたがやっぱ何となく怖かったす。何で買ったのかなあ。ミュージックライフで5つ星とか付いていたからかな。買った日の事はよく覚えてます。近所のダイエーの新星堂さんで親父と買い物に行った時に買って帰ったら自分の部屋のステレオじゃなく下の居間つうか飯部屋にあるステレオでかけた。曲はまずオフェリア。あ、オフェリアをラジオで聴いてやられたから買ったのかもしれません。とにかくかけて親父にも聴かせちゃった。親父曰く「自分が聴いてたスイング・ジャズと同じじゃん。」。同じです。聴かせたのはロックにもこんなんあるんだぜえっへんっとしたかったのかも。そんな親父も今じゃ大病アンド生き残り口もきけぬで覚えてるかなあの時のこと。聴かせたのはそれだけで後は自分の部屋でじっくりと。最初からやられただ。数々の名曲の数々。こんな音楽が有ったのかってウブな高校生はドッキドキしながら。オフェリアの華麗さにはもちろん、ホーボー・ジャングルの声、歌声っす。こんな深い味わいのある声っていったい。それを支えるバックの素晴らしさ。眼前に早朝の湖のほとりを走る貨物列車に乗ってるホーボーの姿がどわーっと。こんなんほうぼうには無いぞ。そしてアーケイディアン・ドリフトウッドです。豪華三人衆リレー歌唱。カナダからアメリカへ時空を超えて流れるカナダ人流浪の民、そしてザ・バンド。歌詞なんかわかんなくてもびんびん伝わって来た。あの独特のポーズでがっしがしドラム叩くリボン氏の絵も。ってこれはお姿知ってからだけど。ここでのアレンジはもう素敵なんて物じゃ無し。ビートルズとは文脈が異なる巨大な何かに触れたような気がして鳥肌がぞわーっと立ちました。それに「同じことさ」だなあ。あのくおくおくおくおくおってゆうロビーさんのイントロ。泣き歌いのダンコ氏。微妙に外れてるとこが世界を広げて。清水のような白玉シンセに乗せて決然と前に歌う。ギターソロです。ぐきゃくけこけくこぷろぷろぷろーって。掻き毟られるよこっちまで。絡むはガースおでこハドソンさんのサックス。すげーやこりゃ。とまあ若き日はメロディのはっきりした曲にまずやられましたが今になっては他の曲にももちろん。1曲目の禁断の木の実。好みです。スワンプ・グルーブつうかザ・バンド流ファンキイ炸裂。終わり際になって出てくるメロディがまた良くて。リング・ユア・ベルになるともっとファンキイに。これはカフーツの遺産かな。音数少ないけどどしんどしんと効果抜群のダンコさんのベース。独特のタイム感のドラムも腰を溜めて。ラグズ・アンド・ボーンズはメロディが切なくてもうたまりません。歌詞でクルーゾーもヒットラーも登場。歌うはリチャード氏。切ない名人だからもう思う壺です。ここでもロビーさんのソロ大活躍。きろきろきろきろーって。そして最後のジュピター・ホロウ。呑気でたおやか。何か中華風なのが不思議。サビが童謡みたいにかわゆいです。全編を通じて大活躍はやっぱガースさんでしょうか。どうしたらこんな人間味のあるしかも温度まで表現しちゃってる音色出せるのかってゆうシンセの音。せせりあがるアコーディオン、うねるサックス。フレーズは浮き草、世界中を駆け巡ってる。全曲作曲のロビー氏の凄さはもちろんです。漏れ聞こえる性格のアクの強さとは正反対の素直&真正面&純朴な曲ばっかしで。さらにかつてソロを弾かないギタリストとして有名になっちまった彼が今回は弾いてます。いつもより余計に弾いておりまーす。数学的ギタリストって異名も妙に納得してしまいますのでどうかまだの方は是非ご覧あれ。とにかくもうスーパーな盤なんではいもう。初期の頃の正直言って突入しずらいかもしれなかった重さも何かこう風呂上りみたいにすっきりと突破して聴きやすさと奥深さが奇跡のように同居しております。行ったことも無いのにああ貴方達カナダ人そして一人アメリカ人なんですねってはっきりとわかって。だから何なんだ(^0^)って言われりゃそうなんすが。そうなんです。 |
11/11(水) どーん。ホット・ラッツだ。あのザッパ嫌いの英国民(これとシーク・ヤ・ブーティーしかヒットしてないっす)でさえ熱狂的に聴きまくりなーんとメロディ・メイカー誌の読者投票でレッド・ツェッペリンUを押さえて1位になっちまったつうお化けアルバム。ナンだとーと思う未聴の方は騙されて一回聴いてみて下さい。好き嫌いはともかくうおと納得して貰えると思うのだが。かくゆう私も3枚目に入手、これでどっぷり、くそこうなったら全部集めてやるこのやろーと決意した記念すべき罪盤なのです。ロック界で一番何か怖い人、敷居が高いったらありゃしないの人ですから本格的に聴き始めたのもあのMSIの怒涛のCD発売の時だったのですけど。さてデビュー以来意欲は高まる一方のザッパさん、どんどんやりたいこと増えて増えて溢れんばかり。一方それに付き合うマザースの連中は文句たらたら、はたから見ると気まぐれにしか思えなかったかもしれんし。でザッパさん腕前の割りにブーブー言う連中に嫌気さして68年8月16日のライブを最後にマザースを解散してしまいまった。そしてビザールとストレートつう自主レーベル立ち上げてお気に入りの怪しい音楽屋さんたちの音盤を次々と世に出してさらにランピイ・グレイヴィに続く2枚目のソロ・アルバムの製作にかかります。相棒はマザース後期にしっかりと彼を支えたマルチ・ミュージシャン、イアン・アンダーウッド氏。この方ただのねずみではござらぬエール大学の音楽学士、バークリー音楽院作曲家修士つう超音楽秀才さん、ジャズ・フリークでサックス、ピアノどんなんでもばりばりの正にこれからザッパ氏がやろうと目論んでいたことにぴったしの人材でありました。で出てきたのが1曲目、ピーチズ・エン・レガリア。どうだーとばかりのこのかっこ良さ。今回は語り&冗談抜きのガチンコ音楽勝負だってここに宣言だ。とかく難しいと思われておりますザッパ・ワールド。確かに一般ロックに比べりゃ入り組んでるのは確かであるけれどわたしゃ実にかわゆい下手すりゃホームドラマの主題曲に使える人懐っこい面持ってると思います。この曲もそう。かっこ良さとほのぼのの同居などとゆう奇跡のようなホット・ラッツ・テーマ曲かと。これでがっちり人心を掌握した後、登場は2.ウィリー・ザ・ピンプ。悪友キャプテン・ビーフハート隊長健在。吠える。このセッション時、廊下で待機中、俺は声でガラスを割ることが出来ると「ぐおーーー」とやったら上で別パート録音中のザッパ先生が飛んで来て「今のクソ声はいったいなんだ!」って。本人はもうちょっとで割れたのにって。なクソ声ヴォーカルがドスかまします。そしてどけどけー俺だ俺だとご本尊のギター・ソロ乱入。いつもより沢山弾いてます。後期とは一味違うブルーノート音多しの超絶フレーズ連発。風速70m俺は負けないぜで後半中東まで飛んでいくフレーズに思わずバックも答えた名演だ。スタジオ作とは言えこれはライブ、一期一会の音の戦いっす。ジャズ・セッションの手法を本当の意味でロックでやりおおせた稀有な例だと確信いたします。3.緑ジーパンおじさんの息子は1.と同様のアレンジド・ジャズ・ファンク。華麗なる音のペルシア絨毯。色んな音が集まっては飛び散ってキンラキンラ光ってます。ファンキイかつドハデなドラムは元祖LAグルーヴィ・ドラマー、ポール・ハンフリー大王。ベースは同じくLAの名人マックス・ベネット。こうゆう腕前とザッパ氏の遭遇は正にソロだからこそ出来えたことだわなあ。70’sジャズ・ファンク大爆発に一歩二歩三歩先駆けてしまいました。そしてアナログではレコードひっくり返してB面1曲目は「ちっちゃな傘」。プリティかつ荘厳なジャンル飛び越えた名品です。2.ガンボ・ヴァイブレーション。A面の2.でとどめ刺されてもう駄目ってなったところにこれだ。オイニー漂うサックスでじわりじわりと始まって緑ジーパンの鉄壁リズム・コンビが煽り出す。1コード・グルーヴ、まだですまだですよーってさんざじらした所で登場はあの鬼ヴァイオリニスト、シュガー・ケイン・ハリス。自然ディストーションのこのヴァイオリンがもう超絶ですってば。てば。言語絶する気持ちよさ。説明でけん。聴いてくれ。永遠にこの時よ続けと祈っているとそうはいくかいこの俺をお忘れですかいと御大ついに腰を上げて出馬負けずと咆哮すればドラム&ベースがうなって最後は全員でのガンボ鍋底までさらうあさましさ。正に鬼どもの狂演、ドキュメントです。最後は「それはラクダだがや。違いない。」。火照った体を少しづつ冷ますような指圧インストでござる。静かにエレガントに絡むここでのヴァイオリンはジャン・リュック・ポンティ氏。とにかく熱いです。この熱さはザッパ・アルバム中第1位。クールな御大がもしかすると我を忘れてプレイしたんじゃないかつう。それだけバック陣の熱さも只者でなく。アメリカ音楽の底無しの体力を見せ付けられた思いでござる。これを聴かれましてあきまへんでしたらザッパ道は歩行不能かと。まさかそんな方はおるまいと思いますが。拒絶される時は物凄い勢いで頼む。嫌ですとこれはもう尋常で無く嫌だぞ。 |
11/12(金) マガジンの79年2作目。マイ人生盤です。当時雨後の竹の子のようにぼっこぼこ出てきたニュー・ウエイヴ・バンド、情報が追いつかず正体不明なもの多し。それでも何か新しいもの聴きたくて聴きたくて、カンと臭いで数々の盤に挑戦いたしました。このマガジンも今でこそバズコックスの創世記メンバー、ハワード・ディボートそしてロビン・サイモンと並ぶ2大NW職人ギタリスト、ジョン・マクガフ氏が在籍しているバンドとわかってますが出た時は全然何物かわかりませんでした。すわ購入のポイントはまずジャケット。荒涼とした荒野にぶっ立つ鉄柱にぶっ刺されている仮面。なんともプログレなこのジャケ。レーベルはヴァージン。これは只者じゃないぞと。で買ってみたら大当たり。あまりの内容の濃さに益々その世界にそしてNW自体への本気の希望を持つことになっちゃった。とわ言え最初は面食らいました。世にオーバー・プロデュースって感じているアルバムをパッと2枚思い浮かべるとしたらコックニー・レベルのプリマドンナはお好きとそしてこれ。何しろ出てくる音の7割方はぐにょーっと歪んでおります。ようやるなあプロデューサーは誰だ。コリン・サーストン氏?誰だ(^0^)。デビッド・ボウイ「ヒーローズ」、イギイ・ポップ「欲望」でエンジニアをやってた人だおおお。と最初はいきなり食べさされたつるむらさきみたいにぐごとか半分言ってたのが何回も聴くうちにその歪みがたまらなく好きになってあらあら、モスト・フェイバリットなものになっちまったのです。何しろ曲がかっこいい演奏はうまいリフは決まってる空気はブリティッシュと全線全勝のありさまでっからこれをNWだからって言って敬遠してたらあーたこんな勿体無いことありませんですことよ。1曲目「敵を養え」。これがNWかいなつう沈うつなキーボードで厳かに始まりミドルテンポのファンクに絡むフレットレスベース。塩辛声のヴォーカル。英国伝統アホ声女性コーラス。華氏451のような音色のシンセ。この時点でぐおーと叫んで悶えまくりなさい。そしたら2曲目「狂いそうなリズム」。勝手に邦題付けてますが。ははは。一転アップテンポのグラマラス・ギター・リフ。キャッチー&POP。そのギターがベースと共にぐおーっと競りあがって行きます。ぎゅおーんとしたシンセとヴォーカルがこれにねとっと絡む。3曲目「切り絵名人」。いっぽんどっこなリズムのミドル曲。遠くで鳴ってる絶望的な白玉シンセ。中古の日光が膝下3cmまで照らすのだ。「サムワンエールス〜」って歌詞を決然と歌って一転崩れかけた廃遊園地のメリーゴーラウンドが誰もおらんのに廻りだします。そしたら反復横飛びで不思議の国のアリス、時計うさぎ登場。最後はロンドで終わる。4曲目「ボディに気合を」。どかんとアッパー・ファンク・ビート。突き放す語尾下がりの歌。マイ・ボディ・スクリームズ・イエース。遠くで鳴ってるぽんぽんシンセ。歌自体がとてつもなくグラマラスなんだってばほんと。5曲目「お前の肝っ玉が欲しい」。必殺のカッティングギタア、高音部でびよーんと絡むベース、ぽろりんとピアノ。うめいて乱入のヴォーカル。とまあ導入部がとにかくかっこいいですマガジン。サビで見えるヒーローズのボイちゃん。最後は積み木を崩して終わり。ここまででA面。完璧だ。B面1曲目6.の「希薄空気」。真っ暗なシンセ静かに鳴り響きぶおんと絡みだすサックス。とんとんとん。溜めに溜めたリズム発進。そのまま暗闇手探りで前進して行くインストです。ワルシャワの上空300mの空気だなこれは。7.「自然に帰って」。て全然帰って無いっす。帰れないから腹の底から帰りたいーって叫ぶのみ。でもやっぱ無理。後半のシンセがまた悶絶もの。新加入のドラマー、ジョン・ドイル氏正にどファンキーベース、バリーさんと息がぴったし。名コンビ誕生の瞬間に立ち会おう。8.「俺はわかってるはず」。このイントロのシンセのメロディだけでも是非食ってくだされ。この年のシンセ・イントロ・フレーズ大賞物です。これだけでダイアモンド一周して1点。この後は説明でけん。ぐらまらす!。9.パーマフロスト。もう止めてくれって止めないでーって叫び続けたこの盤も最後の曲。腰が座りすぎて根が張っちゃったスロー・ミディアムのファンク曲で止めを刺されます。この曲だけでも最前線に立つ実力バンドだってことは証明。ただただ最後のご馳走を味わうのみ。とにかく全編色気に溢れた音楽でしてそのオイニイは30年経とうが50年経とうが失われることありません。キーボードは全部人力、ライブそのままに順番に弾いている。それがまた素敵で必要と感じた時に必要な音を出すのだ。ギターはいわずもがな。イギイ&ボイちゃんが少しでも好きな方なら絶対ノックアウト確実ですから、もう、まだでしたら是非。一緒に悶えておくれ。不滅の名盤です。 |
11/13(土) ニール君72年のソロ4作目。最も成功したアルバムでありましてアルバムは全米1位年間でも1位、シングル「ハート・オブ・ゴールド」も1位、年間で17位とゆうとんでもないことに。当の彼と言えば離婚はするはヘルニアで寝込むはと全くのついてない君状態。そんな中から復活する開き直りの雰囲気が当時の米国人の心情にぴったし合致したのであろう。なんてわからん(^0^)。内容が最高だからだよ。がはは。明るいんだか暗いんだか呑気なんだか激しいのか地味なのか派手なのかさっぱし不明とゆうそうゆう意味でもリアル・ニール君盤だ。そんだけ色合いがあるってことは派手かやっぱ。私はいつ入手したんだろう。不思議とこれだけは覚えてない。高校入ってすぐかな。とにかく何回も何回も聴いて、歌詞は手書きのがさっぱし読めなかったので聴こえてくるワーズの行間を文字通り読んで想像して勝手な世界を作ってました。文化祭でハート・オブ・ゴールドを無謀にも弾き語りでやったりしてその意味でも思い出たんまり。ハーモニカはうまいって言われた。いや簡単だったですそれだけは。今でも弾けますイントロは。えーニール君、そんな訳で寝込んだ状態で生ギター1本で作曲、そして向かった先はテネシー州ナッシュビル。あまりに嬉しくてプレスリー氏宅に密かに潜入はイアン・ハンター氏ですが彼は現地のミュージシャンとニルス・ロフグレン、ジャック・ニッチェとストレイ・ゲイターズとゆう即席バンドを結成、見掛けはすっかりカントリー・モードだけどそうは行かないのが彼でござる。1曲目「週末に」はそりゃ生でカントリーだけど妙にタメ聴いてグルーヴィ、ファンキイです。呑気なのに〆るとこはしっかり〆る。暖かい中にもいつも冷たい風が吹いている。それが魅力です。2.のハーヴェストもそれは同様。さらに呑気でもろ西部劇リズムなんだけど撃たれて血を流しながら愛老ロバと街に向かっております。ロバ君お腹が空いてよれよれなんで自分が怪我をしてるのにも関わらず荷物持ってあげたりして。息も絶え絶えになったところでいきなしどわっとオーケストラ登場でびっくりする3.男は女が必要。いったいどこから声出してんだかわからん情け無い声。情け無いメロディ。それでも大編成オケに負けず全会場に歌声は轟き、それでも男に女は必要です。4.孤独の旅路。既にハーモニカ部分で歌を歌い始めてるのに気付きましたか。私には聴こえました。Emで始まるくせにちいともマイナーな印象は無し。全世界私のポジティブ曲選手権で殿堂入りです。仰るとおりあっしも歳を取りましたがいまだに探しております。でも既に誰でも持っているのかもしれん。気付かなかったり認めようとしないだけで。終盤、コーラスで力みなぎるリンダ姉さんがケツを蹴っ飛ばす。痛ー。5.国のために用意はいいか?全然出来てません。6.オールド・マン。今より30年後に聴くとやたら凍みそうです。怖い。その時が来るのが。7.世界がある。このオーケストラ、エルトン・ジョンの2ndアルバムをいつも思い出してしまいます。ポール・バックマスターがアレンジを担当したらどうなっていただろうって想像する。8.アラバマ。彼の地での黒人弾圧事件を聞きおよび絶望と抗議の曲と聞き及んでおります。直情的に反応してしまうのが人間だけど自分に対しての無力感、情けなさもちゃんと有ると思ってしまうのはファンの贔屓目かいな。たまらんとレーナード・スキナードが返歌返した気持もよくわかるし、結果として名曲を作らせたそのリレー、バトンタッチはスリリングです。9.ダメージ・ダン〜10.歌う言葉。最後のハイライト。俺は人間が好きだから歌を歌ってんだよ銃弾を心に撃たれながらと歌い拍手喝さいが途中でぶちぎられワーズに突入、この瞬間のスリルつうたら言語に絶する生涯ナンバーー1ではありませんか。歌を歌い行間に言葉を溢れんばかりに詰め込んでのあげくギタア・ソロ突入です。ワルツのリズムの中、感極まって全然弾けん。頭は目一杯振って弾こう弾こうとするのだがピアノが励ますように鳴るのだが、手が動かん。やっと音が出るけど制御不能、やっぱり弾けん、制御不能を繰り返して歌に戻り行間に言葉詰め込んでまたギタアソロ、やっぱり弾けん。もう良いでしょうとマントをかけにくる。一旦は下がるも思い直して復帰、挑戦するも壊れてびろびろびろばらぼろびろ。こんなギターを弾ける男が他におるか。フェイドアウトで終わりますがその後どうなったのだろう。やっぱり弾けなかったんだろうな。 |
11/14(日) キッスの人生盤って何だろう。って考えましたらパッとこのアルバムが出て来てしまいました。えーって声が聞こえて来そうですが。発売以来何かとよく聴いてしまう。聴けばドーパミンがどわー、それが人生盤基準値を超えてます。なもんでこっそり宣言。すまねえマジです。結成以来キッスは自分たちで決意したスタイルで音楽界を渡ってきました。最初はご存知地獄のエンターテイメント・メイクアップ・ロッカーで。70’sにそれで黄金時代を築き、80’s逆風の時代には素顔に戻って何とかNWOHMの波に乗ろうと。メンバーも変わり順風満帆とは行かないまでも何とか生き残って来た彼ら。21世紀を目前にして地獄の再会です。場所はその登場が自分達の追い風になるはずが逆になってしもうたMTVの舞台、しかもイメージ正反対のアンプラグドです。ここでキッスは本当の意味で素顔になりました。自分達の設定してきたスタイルを全部チャラにしてただただ曲を演奏した。苦闘の中作って来たのはこんな曲達だと。それがぴたりと生楽器の響きと有って奇跡の名盤と。奇跡じゃ無いか。こっちが気付いてなかっただけで既にこの名曲群は存在してた訳だから。メンバーは天上に旅立ってしまったエリック・カー氏以外の生き残り6人。1.のカミンホームはホッター・ザン・ヘルから。2.のプラスター・キャスターはラブ・ガンから。3.ゴーイン・ブラインドはホッター・ザン・ヘルから。ここであっしはこれがこんな良い曲だったのかと再発見。嬉しくも申し訳なし。4.ドゥ・ユー・ラブ・ミーはデストロイヤーから。タメ気味のエリック・シンガー氏のドラムが生きてる。こんな味わいドラムは滅多に聴けるもんじゃなし。5.ドミノはリヴェンジから。正にジーンちゃんの曲。これもあまりに素敵なんでびっくり。すまぬ。6.シュア・ノウ・サムシングはダイナスティ。ポールさん哀愁路線最高の傑作。このアレンジで聴けて幸せなんてもんじゃ無し。鳥肌が立ちます。7.英雄無き世界はエルダーから。これも元はあのどかんどかん盤だからこのアレンジで生き返ったぞ。8.ロック・ボトムはドレスド・トゥ・キルから。おーこう来たのかーの選曲だ。生であろうが電気であろうがキッスはロックンロールです。9.シー・ユー・トゥナイトはジーンちゃんのソロ・アルバムから。これはもう嬉しくて飛び上がっただわ。あのビートルズ大好きの名曲をみんな思い出してくれよのぴったし演奏。何て良い曲なんだろう。10.アイ・スティル・ラブ・ユーは82年の暗黒の神話から蘇りました。暗黒の時代にもポールさんは哀愁してた。11.いつだって君を見てたはリヴェンジから。これも名曲。他の人がやってる曲で似たのがあるんだけど思い出せん。気持わるー。リヴェンジ実は持ってないんです。大至急探さねば。12.2,000マンはダイナスティから。エーアスさんがゲストで登場。あの歌声健在。歌ってくれます。みんな楽しそう。嬉しそう。13.ベスはデストロイヤー。ピーターちゃん登場。いつもはオケカラオケのがみんなで静かにバックアップ。これだけで涙が出ちゃう。その楚々とした演奏がぶりがまた・・・たまりません。14.ナッシン・トゥ・ルーズは1st”キッス”から。2曲目のあの曲です。ゆがっゆがっゆがっ。うおっやっぱ良い曲だ。15.ロックンロール・オールナイトは地獄への接吻からつうよりキッス永遠曲ですね。やっぱこれで〆なければ。オリジナル・メンバーでボーカル廻すなんて嬉しいことしてくれるなよ。いやしてくれー。このヴァージョンが今までのオールナイトの中で一番嬉しそう。初めて自分達のためにやったんじゃないか。ピーターちゃん生きてるぞと自己主張のメロディ崩し。16.日本盤CDに付いてるガットゥ・チューズはホッター・ザン・ヘルから。廃盤になってしまってどうなるんだろうこのヴァージョン。もったいないです。さてこの再会によってオリジナル・メンバーによる再結成、そしてそれによってブルース・キューリックとエリック・シンガーが去ってしもうたとゆうドラマが生まれました。でも去ったとは行っても一回は地獄の友人になった二人、繋がりは強く地獄の再再会になったりして。やっぱりキッスとゆう世界は麻薬のように魅力的。この盤で心底改めて好きになって、やっぱ人生盤だな。これは。 |
11/15(月) 70’s前半のヒット・チャートを嵐のように駆け抜けて来たエルトン・ジョン。創作意欲とその結果も前々作「黄昏のレンガ路」でピークに達しこのアルバム「キャプテン・ファンタスティック」で一旦自分の半生、相棒のバーニー・トーピンとの物語を総決算いたしました。メンバーはゲストを加えずすっかり息の合ったエルトン・ジョン・バンドとプロデュースのガス・ダッジョン氏。超高速でアルバム製作することが多かったこの時期に1ヶ月以上時間をかけてじっくりと、前作カリブは軽快なイメージが有ったのに対して待ち受けるこちらも今度のは何かが違うとどきどきして待っておったのです。そしたらやってくれました。全米アルバムチャート史上初、初登場で1位。向こうの人もめっちゃ期待したのね。発売と同時にたーっと店に行って購入、まずびっくりしたのはジャケ。何じゃこりゃあ(^0^)。センス的にはてと思うものが今まで無かったとは言えないけど今回のはえらいこっちゃ。ダリみたいだわ。Wジャケの中身を見るとジャケのでかポスターに歌詞小冊子パンフレットと超豪華。そこにはエルトンとバーニーの物語、古ぼけたレジナルド・ドゥワイトの写真。マジで何か総決算してる雰囲気が濃厚です。才人がその気で気合入れて作ったのならこちらもその気で聴かなければ。1曲目表題曲は文字通り序章二人の歌。英国そのものの生ギターの音色。レイ・クーパーのパタコン・コンガ、普通の8ビートでも一聴してわかるナイジェル・オルソンのドラム。今のロックじゃ絶対聴けないタイミングで入るディー・マレイのベース。これまた自分解釈でとてつもなくオリジナルになってしまったデイビイ・ジョンストンのディストーション・ギター。これが織物のように重なってその上にたんたんとしたしたエルトンのヴォーカルがのる。もうやばいです。この手練手管の押し付けがましくないドラマティックさ。この時点でこれはえらいことになってるぞと確信して。2.バベルの塔。ここでエルトンのピアノ登場。沈うつなしかし軽快、どこでも聴いたことの無いメロディ。上にぶっとんで下に下がる。重過ぎない荘厳さ。欧州なんだけどタメに溜めたグルーヴィ・リズムで走ります。3.ビター・フィンガーズ。うーん、説明でけん。この絶妙なアレンジを。演奏を。とにかく見事です。ここまで来ましてどうもいつもと違う気が。もしやヒット曲を今回は出す気が無いんじゃ無いかと。もともとリフレイン連呼で掴んでのヒット曲をあまり作る人では無いけれど今回は特に一筆書き風の曲調。作詞のバーニーさんはほんとに物語を書いてエルトンはそれをそのまま歌にしました。4.汽笛が鳴ったら教えて。これまた説明不能。何風だろう。ちょっとハードボイルドな雰囲気で。絡むストリングスは名匠ジーン・ペイジ氏。軽快でバランス崩さず、ギターのオブリガードに絡む。5.僕を救ったプリマドンナ。本作唯一のシングル。えらい地味。でかつ超ドラマティック。プリマドンナが男か女かは別にして(^0^)、力入ってます。歌詞など英語でわからなくても心情はずきずき伝わって来る。ぎりぎりの臨界点まで達したエルトン世界だなこれは。これ以上やるとこのセンチメンタルはやばい。でも来るなあ嫌ちゅうほど。ここでレコードひっくり返してB面。CDでは6.ミール・チケット。エルトン流のあのファンキイ・ロックンロール。全く直輸入じゃないねじれた有り様はこれぞイギリス産です。ピアノにしてもバックの演奏にしても全部そうなのがこの人の音楽の大特徴だと思う。サビの興奮って言ったらありゃしない。ゴムみたいなデイヴィさんのギターソロに大騒ぎ。7.ベター・オフ・デッド。邦題では「僕に迫る自殺の誘惑」なんてぶっそうなものが。相当苦しんでた時期があったのかな。あれで。あれでなんて言ったら悪いです(^_^;)。寸詰まりのドラムの音色が印象的。8.ライティング。打って変わって軽快な歌を書く喜びが伝わって来る曲。デイヴィさん大活躍。歌を支える名人ギターだな。9.はバラード。ビリー・ジョエルを思わず思い浮かべる人がおるやもしれませぬがこちらがオリジナルです。歌詞をいぢらずにそのまま曲にしてこう出来るのかと毎度毎度の事ながら感嘆の一語。すげえなあ。10.カーテンズ。そのまま続くラストは毎回恒例の大団円。大団円曲はちょっと外すことが多かったりして。とまあ曲ごとに何か書くとしたらこんな感じなんですがなんつってもこのアルバム、全体のトーンが最大の魅力です。一枚一枚空気が全く違うアルバムを作るエルトンさん。今回もそう。これだけは聴いてもらわねば。到底言葉じゃ書き足りない。今度のは特に説明不能のもの多し。でもアレンジ、曲、演奏は音楽の頂点に立つものだとは、これだけは確信いたします。そりゃ多少贔屓目が入ってるけど。はは。それにしても。歌が発音はっきりし過ぎとかドラムが大味とか人に言われてびっくりしたことあり。そういやそうだ。でも欠点は長所ですから。それはそれぞれの人がどう聴くかによるなあきっと。さてCDではここからボートラに突入。言わばトータルアルバムですからここからは完全に別口で聴いていただくこと希望。11.ルーシー。お馴染みビートルズ、サージェントの曲。うーんこれだけは大味説に賛成するしかないかな。わたしゃ嫌いです。根っからのファンだから言わせていだくの勘弁していただければ。やればやるほどドツボにはまってしまったような。12.ワン・デイ・アット・ア・タイム。ジョン・レノンさんの曲だ。これはぴったり。自作かと思ってしまうほどです。13.フィラデルフィア・フリーダム。ご存知フィリー・ソウルに挑戦した大ヒット曲。バンドのメンバーが自己主張してエルトン・ジョン・バンド名義になった。微妙にバンド・バランスが崩れて解散に至ってしまった曰くつきの曲でござる。フィリー・ソウルって言ってもいつものようにまともに研究しないエルトンさん。必死にストリングスでそれっぽくしようとしても完全オリジナルです。それがそうです最大の魅力。しかしこの妙ちくりんな曲がよくヒットしたもんだ。って大好きなんだけど私も。&この盤に入ってるのがまったく似合いません。ところでブックレットにのってたドッグス・イン・ザ・キッチンって曲は存在するのだろうか。30年来気になってねえ。 |