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ろっくす特選盤




 まず最初に、この盤は特別なんす。マックの最高の出来のものは何かと問わるればそりゃあ噂でんがなと答えますが一番好きなのはと言えば別の要素もごんごん加わっちゃってこれになっちゃう。それは昔も今もまったく変わらず今回のリマスターでさらに思いを深くいたしました。これを出す前のマックはと言いますとブリティッシュ・ブルース・バンドから脱却、独自の英国ロック路線を粘り強く歩むもことごとくセールス的に敗退、メンバーも固定出来ぬ有様ではたと考えたリーダーのミック・フリートウッドさん、これはプロダクションに問題があるのではとエンジニアのオーディションを行います。そんな時やってきたんがこの盤のプロデューサー、サウンド・シティ・スタジオのキース・オルセン氏。こんなんやってますと聴かせたのが自らの初製作盤、バッキンガム・ニックスのアルバム。まったく売れんかったその盤を聴いてピピっと来たミックさん、キース氏もろともバッキンガム・ニックスをバンドに加入させるべくアプローチ開始。丁度フロントマンのボブ”エボニアイズ”ウエルチ眼鏡が止めちゃったとこだったのね。しかしまたもや成功しておらん人間を入れようとするとは。この時点では海のものとも山のものともわからんのにこれは人生を賭けたカンだったかもしれぬ。最初はリンジイさんのみ入れようとしたらしいが彼がこの娘は欠かせない相棒です、わたしゃ一緒じゃなきゃ嫌よと恋の病にとろんとした目で言ったものだからこりゃ仕方が無いと二人とも加入させて、ツアーで手探りから両者のサウンド融合。そしてこの盤の製作にかかった次第でございます。毎回聴く度に思う謎、それまでの盤と打って変わったこの洗練は何故か。今日もこの直前の盤、あのおっとろしいジャケの美女と野獣を聴きますとマクヴィさん作の曲においてはもうすでにかなり噂マックしてるんだけどやっぱかなり垢抜けない。ド真ん中突き抜けそうでぼわっとしてる。これがこの盤でがらっと音楽の中心絞込み音が出来たのはやっぱリンジイさんニックスさんの存在故か。言い換えればぼわっとしてたのはその後のパリスでは全然違うことしてシャープになったものの元来はぼわっと男のボブ・ウエルチさんがいけなかったのかもしれません。ぼわっとが味でそれはそれで良いんだけど。さらに不思議なのはリンジイ・バッキンガムのアルバムも洗練と言うには今ひとつだったこと。これは両者の出会いによって何かわからぬバンド・マジック、初めてこれって音がみんなに見えたのだろうかと。それが伺えるのがリマスターで登場のJAM NO.2。これは剣豪の果し合いみたいに凄いす。ちょんちょんと突き合ってお互いの間合いと音を確かめてる。そしてコンサート。たまたま入手のその頃の音を聴くと見事にそれ以前のマックの音と噂マックの混ざり合いでござった。な訳で新生マックはまごう事無くバンドであります。一人一人では出来得ない音が全員揃って初めて出来得たと。それがこの頃は心底わかっていたからこそこの後二つのカップルが破綻しても必死になって次の噂を作ったので無いかと思っています。
 最初に戻って何で私がこの盤を特別だと思うか。それはその最初に融合して出来たこの音のキラメキが最初でなければあり得ない音で詰まっているのが大きいかも。それが特別な雰囲気空気で味わえる。すっかり溶け合ってこれはどのジャンルのどの音楽だなんて最早わからんようになってるもんな。ここまでの境地に達してるのは私が聴いた今までの音楽の中でもひじょうに稀なのです。摩訶不思議。音楽聴く一番の魅力はそれなんで。それの真骨頂はオーバー・マイ・ヘッド。チャートに上がって来て最初聴いた時はそりゃもうこれは何なんだ、ソウルか、バンジョー入ってるし、何なんだーっと感じたのを今でもくっきり覚えております。
 今回のリマスターで(ご好意でVさんに速攻で聴かせていただきました。もう大感謝。)音はと言えばそれは噂と同じく地味ながら的確なグレードアップ。同じく名人ビル・イングロット氏の手によって締めるとこは締め出すとこは出しの文句無しこれがリマスターだ音です。未発表は先ほどのジャムだけなんだけど嬉しいのはシングル・ヴァージョンの付加。改めてびっくり。こんなんだったっけ。まったく別録だったのか。だよな。普通はシングルの方が無難にキャッチーにするのが当たり前だけどこれはこっちの方が異様な迫力、怖いくらいです。どう怖いかはどうか聴いてみてくださいまし。これはこのヴァージョンを加えてがこの時点でのマック像丸ごとだなっと完全納得した次第であります。

(マスター)04.4.11

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