ロクシー・ミュージックのヴォーカリスト、ブライアン・フェリー氏。バンドの1stアルバムそしてシングルの成功を受けて製作され2ndと3rdの間に発表された初のソロ・アルバムです。音楽的相棒はジョン・ポーター氏、2ndでゲストでベースを弾いておった方。ドラムはバンドのポール・トンプソンちゃん。マンザネラ氏は1曲だけマッケイ氏は参加しておりません。エノはもちろんいない。曲は全カバー。何ともワーカホリック。当時バンドイメージ作戦的中で大成功したのは良いけれど色々と風当たりも強くなってきたことが想像され一つは人気者イーノちゃんを追い出した疑惑で。ソロを出すことでロクシーは自分のやりたいこと100%ではない。つまりワンマンバンドじゃありゃあせんぜってメッセージを。も一つは歌と音楽ヘンテコですねえひどいやつになるとヘタクソだあなって。面と向かって言うやつはおらんだろがこの人気だけの成り上がりものがーって空気ビンビンだったのではないかと。そこで1stのわしらヘンテコ野郎です作戦と180度転換したけっこう皆と同じなんですってのがこの「こないアホなこと」アルバムです。
な訳で収録曲はもう全部それまでのUKチャートを見る限り英国人が好みそうなやつばっか。もちろんフェリー氏のアイドル曲ばかりだと思うけど。それをロクシーとは違い音楽的口出し、選択権モロモロ、自分のやりたいようにやっただわ。大方の人は「話題のバンド、ロクシーの人の初ソロ?おお素敵な曲目。聴いてみよ」となって聴いてみたらあまりのすっとんきょーな歌いっぷりに大笑い、なんじゃこりゃうへえ失敗したもう聴かんてな人と面白れーぎゃははって何回も聴いたり人に聞かせてる内にいつのまにかそのヘンテコ歌いがマジ好きになっちゃって離れられなくなるの2種類に別れると思います。実際物凄い歌い。本人大真面目で稀代の名曲を歌い倒してるのがさらにおかしくって腹がヨジレマイオス3世に。ハードレインなど原曲の影とどめてません。は、は、はとか来た日にゃあ。ソロでワンマンバンドじゃないようって言いたいくせにノリはモロ、ロクシー以外の何ものでもないぞ。最初は私もこれ嫌いだった。それが今じゃ大好きに。いつそうなったんだ。この爆進ビートがとにかく心地良いっす。例の笑ってるんだか泣いてるんだかわからん顔で例のをどりが目に浮かぶリヴァー・オブ・ソルト挟んで、ゴフィン・キングの3.へ。ラブリーなオールディズを破壊して。正に一緒に歌えないカバー曲アルバム。歌いたいんだけどどっちがメロディ正しいんだかわからなくなってくる。ニック・ロウのバンド、ブリンズレイ・シュワルツもほぼ同じ感じでカバーしてて趣味が同じだってのが怖いぞ。次がジャニス・ジョップリンの名唱で有名な4.。よせば良いのにー。挑戦です。歌っている間は本人かなりイケテると確信してる模様。違う意味でイケてる。次はリーバー&ストーラーのロッケンロー。音程は独自だけどリズム感覚は抜群なのだ。とはいえけっこう必死で追いすがってるけど(^0^)。困ったのが次のイッツ・マイ・パーティ。いや嬉しくて困るん。スチュワート&ガスキンで80’sにカバーヒットしたやつ。完全に「俺は男だ」もしくは「サインはV」で。そのまま森田健作が歌ってもOKなサウンドなの。最後にパッパパッパって自分で歌って駄目押ししてるぞこの人。次は英国人のアイドル、ビーチボーイズ登場。ロクシーとBB。うわ。凄く楽しそう。アレンジも気合入ってるからに。間奏のギターはポーター氏ですが音色がマンザネラちゃんとほぼ同じ。8.は何とストーンズの悪魔を憐れむ歌。ミックちゃんに挑戦。夏の納涼祭に変身しとる。必殺謎の女性コーラス隊のアングレッツも大活躍。今晩何食べようかしらと考えながら歌ってるので無表情です。ブラボウ。ここでのギターももろロクシー色だから墓穴掘りまくり。次のトラック・オブ・マイ・ティアーズも最高で。スモーキイ・ロビンソンのモータウン・クラシックなんですが。ここはリンダ・ロンシタッドの熱唱を思い出して聴くとおかしさ、いや面白さ倍増。コーラスがまたアホ感煽ってます。まずこれは一緒に歌えない。ストーンズやったらビートルズもやらねばとユー・ヲント・シーミー。これだけマンザネラ氏参加。こうやっておくれと言われて素直に弾いてます。これが相当恥ずかしそうでかわゆい。最後にフォロム・ミー・トゥ・ユウとアイ・フィール・ファインのフレーズをちらっと。えー弾かなきゃ駄目ー?って。そっと。ははは。さてここから最後まで3曲はフェリー氏が女人を口説く時に使用するために録音したと思われ。まず11.。これはかなり良い線言ってるか。2番までは。2番から歌が破壊され始めます。女人飲んでたシャンパンぶっと吹き出す。さらにフェリーちゃん必死に。今度はスティーヴィ・ワンダーでどうだ。踊っちゃうぞ。あーまだ笑ってる。ではどうだ。タイトル曲をムーディに決めてやるぜ。スタンダード曲だぜ。これも2番までうっとりだったのに。2番からリズムをレゲにし出して夏の納涼祭が始まってしもうた。手拍子も指パッチンもサービスだ。あー完全に女人笑いすぎて泡吹いて倒れてる。
と可哀相な結末となってしまいます。がハードレインが大ヒット。けっこうボクの歌みんな好きじゃんと立ち直りこのソロ路線でも爆進していくこととなります。元々これらの曲やブラック・ミュージックが大好きで何とか彼らのように歌いたかったフェリー氏。んなこと言うてもどう逆さまにしてもあんなん歌えへんし、そりゃああの人たちはそのまま歌ってればかっこいいけどうちらはこない工夫せんととあの手この手で努力奮闘。でも後で自分で聴いてみるとあひゃあ膝を抱えて落ち込んだりして。でも俺はやるぞのどうしょうもない音楽野郎根性、これが私は大好き。彼が多分自分で嫌ってる部分のファンです。劣等感が自分独自の音楽を作る原動力なのだと思う。キング・クリムゾンのオーディションで何じゃこりゃと落としたフリップ氏と仲良くしてるイーノなんかとは遊んであげない。僕はこれでスタアになってやる。それにしても何であの娘笑ったんだろう?
(マスター)2004.8.24
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