*今週の「完璧なシングル」は
「うつろな愛/カーリー・サイモン」です。
針を落とすやいなや闇の向こうから立ちのぼるクラウス・ボアマン氏のベース、どんやかどんやかど、振るマラカスしゃ、どんやかどんやかど。切り込まれる生ギターストローク。ピアノが二つ音、まだかと思うとおもむろに入るカーリーさんの歌。衝撃イントロです。開始直後に金縛りにあって歌の世界に否応無しに引きずり込まれる。じわりじわりと広がるピアノに乗って登場するは目一杯勝負服に包まれたセレヴィな女性。パーティに乗り込んで狙う獲物は一つであるとゆう。サビで歌うはそれを見つめるカーリーさんでありましょうか。何を言っても無駄。この歌だって聴こえやしない。無駄。高らかに鳴るレイ・クーパー氏のパーカション、刻むジム・ゴードン親分のドラム。数年前から聞かされ続けた話。けっして私たちは別れない。でもいつしか確信は薄れ他の他愛無い恋愛と一緒にそれは夢と化していく。コーラス。ユア・ソー・ヴェイン。ここで色男ミック・ジャガー登場。この歌だって聴こえやしない。無駄。ギターソロに突入。言いようの無い感情は全てそのフレーズ一つ一つにあります。声を潜めて再び説得リフレイン。初めて切れ込むポール・バックマスター氏の弦。強く気持ちで・・貴方には無駄。貴方に向かって歌うこの歌も聴こえやしない。3番。私は聞きました。貴方がサラトガ競馬場に行って貴方の馬が当然のように勝った事を。でもどんな名馬であれ突然皆既日食のように(ここで名馬エクリプスと皆既日食のダボミーニング)へぐる時もある。その自信もどこへ向かうのか。だって貴方が見つめる相手は親友の夫。貴方は親友である愛人の妻と一緒にいるのよ。コーラス。貴方には無駄。貴方に向かって歌うこの歌も聴こえやしない。無駄。
一つ一つかみ締めるように歌うカーリーさん。歌詞はやたら難しいです。友人が直面する不倫の歌だと解釈したんですけど全く違うかもしれん。友達に向かって無駄と言ってるかもしれませんけど自分の話で自分に言い聞かせているのかも。それでも力強くそれこそ奔馬のように立ち向かう姿が音楽と共に眼前に現れます。プロデュースは音楽界きっての鬼プロデューサー、リチャード・ペリー氏。カーリーさんが何回歌っても満足せず、へろへろになって半ばやけくそになったテイクがこれだそうです。まるで巨人の星最終回の星一徹。大リーグボール3号を打たせるために伴宙太に長時間逆立ちを命じた時のよう。心の底からの感情を吐き出させるためには必要だったのか。そこで励ましたのは助っ人唇仲間ミック・ジャガー兄貴だったと聞き。一緒に叫ぶヨー・ソー・ヴェイン。いつしかミック兄の英国訛りに引きずられてヴェインがバインになっていく。演奏者全員が歌の世界に完全没入の奇跡の瞬間ここにあり。生粋のプロドラマー、ゴードン氏。ジョン・レノン氏の元で歌伴の真髄を会得したボアマン氏のベース。この世界をものすためにペリー氏が打席に立たせたのはエルトン・ジョン歌世界の参謀、ポール・バックマスター氏とレイ・クーパーぴっかりさん。何回聴いたかわかりませぬが、そのたびに戦慄が体中を駆け巡り。これぞ完璧なシングル。時間なぞものともしない4次元曲なのであります。クールダウンのために暖炉の暖かさのB面。フォンド・オブ・ロビンを。
改訂版
(山)2005.08.20
ユー・ビロング・トゥ・ミー
カーリー・サイモン
1978/5/6
♪ぶろろーぶろろーむせび泣くサックスぶろろー♪
「おこんにちわ。えー、毎度御馴染みレコ屋の80’sです。えと、坊主はいないか?坊主。」
「あ、おいちゃん、こんちわ。なーに?」
「お、いたか。あのな、この村で一番、アーバンでアダルトな場所は無いか?今日はそこで商売すっから。」
「えー?アーバン。何それ?あらんどろん?」
あまい囁き(訳詞付) -
ダリダ/アラン・ドロン
http://www.youtube.com/watch?v=HF9ZpnOxYWE
「それはダーバン。都会的ってこったな。」
甘い囁き(細川俊之)
http://www.youtube.com/watch?v=qq7pnLf1TT4
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