*ザ・バンドつうのも実に入りにくいバンドだと思います。最初から謎の大御所雰囲気ぷんぷん、何か埃ぽくて、そのくせ渋いって言葉一言で片付けられやすくって、ああああゆうのねで済んじゃったりしたりして。私も最初は加藤茶似の人がおるなあってくらいしか中学生の頃は思っていなかった。チャートにも縁が無いし。それがボブ・ディランとのライブ・アルバムでおおエキサイティング、でそのセピア色に浪漫感じた時点でもう一挙に大はまりとなった次第です。それでも初期モノはやっぱ敷居が高い感じもありまして、まあそれは本人達も確信を持って俳優で言えばアーネスト・ボーグナインとかリー・マービンとか戦争映画に出てくる世界おっかない顔選手権エントリー常連みたいな人たちが跋扈する世界の音楽をやってる訳でしゃあない面も。でこのアルバム、ムーンドッグ・マチネーの登場だー。先のおっかない顔音楽でも怒りの葡萄のヘンリー・フォンダとか大脱走のチャールズ・ブロンソン程度時折ボルサリーノのジャン・ポール・ベルモンドが登場するくらいに留められてる実に入りやすい音楽なんです。実際昔現場に出てた時一緒に働いていた電気屋さんの主任さん、ギターが出来るつうんで無理やり一緒にイカ天出てもらったお方なんすがライブでやろうぜと車でこの盤聴かせたら泣きやがった。洋楽などまるで縁の無い人だったんすが。確かに全て先入観とっぱらうとこれほどわかりやすくごーんと来る音楽は無いかと。この盤の収録曲、実は彼らのオリジナルではありません。ビートルズとほぼ同世代ながら彼らの活躍してた時期にはドサ、明日のジョーに出てくるドサ・ボクシングみたいなもんで長いことクラブ廻りしてた時にやってた当時のヒット曲をカバーしてたものばかり。ビートルズもドサ出身なんだよな。でもザ・バンドのばやいそれが長くてしかも北米地域ってことで地域密着型貧乏人志向強いのも無理からぬ所業で。そこにもちゃんとある素晴らしい音楽を追い求めて来て自分の音楽を作って来ました。で、ここに来てさらに自分たちのルーツをもう一度、はじめの気持を取り戻そう運動とゆう訳で。きびしーうるさーいリーダー、ロビー・ロバートソン氏のきゅうきゅうの音作りから一歩離れてお互いにちとリラックスして音楽やってみようってことになったのかもしれません。我々としてはまず食いついちゃうのは「第3の男のテーマ」だー。映画のラストシーンの絵も忘れがたくそしてあのメロディも。バンドさん、そこは嬉しいことにまっつぐ真正面からそのままやってくれてます。ただし音色は全編彼らのもの。あとはグレート・プリテンダー。プラターズでお馴染み。フレディ・マーキュリーちゃんもソロでやったなあ。これもまっつぐ。メロディに馴染みがある分、リチャード・マニュエル氏のヴォーカルの素晴らしさにKOされちまう。他の曲は我々異国東洋ポンニチからすればちと馴染みが薄いものばかりかもしれませんがそれぞれひねくれたとこの無い名曲揃い、バンドもやっぱりひねくれずそのままやってそれがまた素晴らしいこと。アイム・レディではグレムリンも踊り出しちゃうし、ホ−リーカウではのほほんとしちゃうしシェア・ヨア・ラブでは泣くし、最後のサム・クック・ナンバー、ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カムではもう涙で顔崩れちゃってぐしょぐしょだあな。タイトルからして歳を取れば取るほど感じいっちゃう。言葉わかんなくとも唄の威力だこれが。大胆な解釈、自分たちのアレンジで原曲を凌駕しちゃう例は音楽界で多々有ると思いますがこれだけそのまんまで原曲の素晴らしさはそのまんま、そしてザ・バンドってバンド、自分たちの素晴らしさを出してる例はそう無いかと思います。彼らも改めてこれで何かを確信したかと。このまっつぐ清らかなって言って良いほどの透明な空気そのままで次の大傑作「南十字星」に挑むこととなります。バンドって言ったら最初の2枚って大抵の名盤本には書いていると思うけど何もそのまま従うことなし。後になって聴く自由って訳でここはこれから聴くって凄くありだと思います。彼ら自身だってこれから始めたのですから。 (マスター)2004.10.11 |
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